小堀球美子の相続コラム

相続コラム~となりの遺産分割、手続き編「3遺産分割と共有物分割」

登記簿を見ると、共有の状態になっている不動産について、共有関係の解消は地裁での共有物分割訴訟であるととらえるのは尚早です。

たとえば、父が亡くなり、不動産があったのですが、この不動産について、兄弟間で遺産分割などしなくて、数年放置しているというようなことは、良くあります。
何年か経って、登記簿を見てみると、父が亡くなった「日●月●日相続」を登記原因として兄弟に1/2ずつの移転登記があったとき、これはどうとらえるべきでしょうか。
この登記をするには、2通りの方法があって、①兄弟で遺産分割をして、1/2ずつの共有にして登記したときと、②兄弟で遺産分割の話し合いはしていないが、兄が単独で法定相続分での登記をしたときがあります。
遺産分割をして、兄弟で相談してあえて1/2ずつの共有にしたときには、①になりますが、これはわかりやすいと思います。
問題は、②なのですが、弟が兄に内緒で単独で、法定相続分の登記をすることもできるのです。

①も②も、兄1/2、弟1/2、登記原因相続となっていて、登記簿だけからでは、兄弟で遺産分割をした結果か、遺産分割前の共有状態を登記しただけなのか分かりません。

こういうときには、法務局に行って登記を申請した人が申請の時使った書類を閲覧してきます。そうすると、申請用紙に申請者が弟一人になっていたときには、②の遺産分割前の共有状態を登記しただけというのが分かります。
そして、兄弟仲良く不動産を共有しているときにはいいですが、兄弟仲が悪くなった、兄弟の代が変わって従姉妹同士だと上手くいかないというときには、この共有状態を解消したいと思うこともあります。
このとき、共有状態の解消方法は、①の場合は共有物分割訴訟で、②の場合は遺産分割調停なのです。

もっと難しい事例を見てみましょう。
父が先に亡くなって、父の不動産について、遺産分割がまだできていないうちに、母が亡くなったとき。母には、兄に全遺産を相続させると遺言があったらどうでしょう。
父死亡で、不動産は母1/2、兄弟1/4ずつの共有になっています。母は、この1/2を兄に相続させるという遺言を残しているのです。
すると、兄は遺産分割をしないでも、母の1/2と自分の1/4を手にしている訳です。
ただ、弟はこの結果が気に食わないで、兄と父の遺産分割協議に応じません。
兄としては、この不動産を早く売ってお金にしたいと思ったら、どうしたらいいでしょうか。
兄の取るべき手段は?
実際の事例で、兄は、父の死亡による相続の登記を、②の方法で行い、その後、母の死亡による相続の登記を母の遺言を元に行ったのです。
登記上、父の死亡日●月●日相続を原因として、母1/2、兄弟1/4ずつの登記がなされ、継いで、母の死亡日●月●日相続を原因として、母の持分を兄が相続したという登記が為されました。
このとき、兄は、弟と共有状態を解消するために共有物分割訴訟を選択しました。これは正しいでしょうか。
答は、兄は正しくなく、家裁に遺産分割調停を起こすべきでした。
②’父の遺産について、法定相続分で登記をし、そうすると、母1/2、兄弟1/4ずつになりますから、母の1/2は遺言で兄が取得できるとしても、兄弟の1/4は未分割で、それについては、父の遺産について遺産分割をしないとなりません。つまり、兄がこのとき、共有物分割訴訟を提起しても却下されてしまうわけです。
これは結構難しい判断で、弁護士でも選択に誤っている事例を見たことがあります。

同じ共有状態を解消するのに、地裁と家裁の違いがあるなんて、法律ってめんどくさいですね。

2020-06-11|タグ:

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