相続について預金の使い込み(不当利得返還請求)

相続のご相談でもっとも多い「遺産分割」の争い。
その中でも、相続人で分配するはずの銀行預金を勝手に引き出してしまったり、使い込んでしまったり…といったケースで相談に来られる方が多い。

預金の使い込み(不当利得返還請求)

相続財産である預金を、相続開始前後、法定相続人(親族)の一人が口座から引き出していることはよくあります。このとき、相続開始前は、被相続人に無断で預金を下ろしたとして、被相続人がその者に不当利得返還請求ないし、不法行為による損害賠償請求ができ、相続が開始すると法定相続人がこれらの権利を相続したとして行使が可能となります。

相続開始後は、預金は法定相続人が相続分に応じて承継するので、それを超えて利得した分について、他の法定相続人は、不当利得ないし不法行為の請求が可能となります。

不当利得か不法行為かですが、一番の違いは時効です。前者は行為の日から10年、後者は行為を知ったときから3年で時効にかかります。立証の困難さは同じと言っていいと思います。

これは本当によくある事案で、当事務所でも新しい依頼が来ると、「使った人」か「使われた人か」で2分することができるほどです。
特に、相続開始前の使い込みは3年以上前のことが普通ですから、時効の問題があるとして、不当利得返還請求で訴訟提起することのほうが多いと言えます。

遺言相続による遺産分割について

遺言では、遺産をどう分けるかの遺産分割方法の指定(「相続させる」遺言)や、遺贈(法定相続人以外の者に分ける)、認知、遺言執行者の指定などができます。遺言があればこれに従って分けることが原則ですが、法定相続人全員の合意があれば、遺言と異なる分け方もできます。 認知や相続人の廃除が遺言されていた場合、家庭裁判所による遺言執行者の選任が必要となります。遺言にその定めがあった場合は、その定めに従います。

よくある質問では…

使い込みの返還請求を行うとき、原告と被告の言うべきこと証明するべきことは何でしょうか。
※原告=返還請求をするあなた、被告=返還請求を受けるきょうだい

当事者の方はとてもよく勉強されていて、このようにお聞きになる方が最近多いです。 使い込み返還請求訴訟の主張立証のしくみを表にまとめました。ただし、下記表は典型例を想定しており、具体的主張証明の仕方は各事案で異なります。
詳しくは、当事務所にお問い合わせください。

遺産の使い込みに対する抗弁について(相続コラムより)

その1

このような場合は、遺産分割調停を申し立てて返還を求めるのでなく、地裁へ返還請求訴訟を起こします。こういった訴えに対しては、被告は、多くは、下記のように抗弁します。

  1. 被相続人に頼まれて引き出し、被相続人のために使った
  2. 被相続人からもらった(贈与を受けた)

(1) のときには、被告としては委任契約と使い道を説明することになります。
(2) の場合には、贈与を裏付ける証拠を出すことになります。

いずれも、被告の言い分に理由のないことは原告が証明すべきですが、実際の訴訟では、被告にも出来る限りの説明と立証が求められています。

その2

遺産の使い込みに対して、地裁で返還請求して、被告が、被相続人に頼まれて引き出した、包括的委任契約があった、などという抗弁を出したとき。

被告としては、頼まれたいきさつと、使い道の説明をします。使い道は、それ自体合理性のあるものか、領収証等の裏付けがあるか、を中心として説明します。 この手の訴訟は、通常親族間で争われるので、裁判所は基本的に和解でまとめたいと考えます。
まず、合理性のある使い道は証拠がある限り認めて、証拠がなくとも証拠があるものから推して、このくらいは認めても相当だと心証を開示してくれます。

もちろん、当事者特に被告が全く返す意思がないときには、和解は無理ですが、被告の説明と書類の裏付けとで、裁判官もある程度の心証形成が可能なようです。

使い込みをした人の多くは、被相続人の預金通帳等を預かる立場にあった人ですから、全くの横領行為ではないことが普通なので、原告としてもある程度の譲歩をして、和解に応じるのが得策です。

その3

被告が、被相続人の預金を取り崩したが、引き出しを依頼され、それをあなたに(またはその家族に)あげると言われたのでもらったと抗弁したとき。

この抗弁の時、使い道を説明する抗弁に比して、もらったものだから返さない、と言うのですから、被告の態度はよりかたくなです。早期の和解は難しく、証拠調べ(当事者尋問など)が行われる公算が高いです。

この場合は、裁判所は、贈与契約があったかの認定を行うのですが、親族間なので、贈与契約書など書面の裏付けがないことが多く、被相続人と引き出した人との関係、被相続人とその他の法定相続人との関係など、周辺事情で認定することになります。

そこで、原被告双方に、その点を主張させて、証拠調べしますが、やはり親族間の紛争なので、その後でも和解勧告がされることが多いです。

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