小堀球美子の相続コラム

相続法改正~恋しさとせつなさと心強さを~1払い戻し制度

【可分債権の取り扱いの変更による払戻制度(せつないね)】

平成28年12月の最高裁の判例変更により、可分債権である普通預金、通常貯金について、それまでは、法定相続人ひとりで法定相続分での引き出しが可能であったのが、遺産分割協議が必須となり、遺産分割の結果、それを取得した法定相続人が手続をしないと引き出し等ができなくなりました。

たとえば、亡母にA銀行に900万円の預金があったとき、法定相続人BCは、それぞれ、450万円ずつの払い戻しが可能であったのです。

それが、判例変更後は、BCの間で遺産分割協議が整うまでは、BもCも、引き出しはできなく、BC間で遺産分割協議が成立するまでは、いかなる引き出しもできなくなったのです。

そうすると、当面の生活費や葬儀費用等で困ることが出てきます。

そこで創設されたのが払戻制度です。

この手続を依頼者さんの希望で代行したことがあります。

亡母の除籍謄本や法定相続人の戸籍謄本を持って、金融機関で手続をする必要があります。

この払戻制度では、Bは、A銀行で、900万円×1/3×1/2(法定相続分)=150万円の引出をすることができます。引き出しの上限が150万円です。各金融機関ごとに上限が150万円です。

この制度は令和元年7月1日以後に開始した相続に関し適用されますが、経過規定として上記施行日前に開始した相続であっても、施行日以後に預貯金債権の払戻しが行使されるときにも、預貯金払戻し制度が適用されます(平成30年法律第72号附則5条1項)。

あるお客さんの亡母は令和元年7月1日、平成28年12月19日より前に亡くなっていて、相続人Dさんは、E銀行で判例変更前の法定相続分での引き出しができたのですが、F銀行G銀行では令和元年7月1日以降に、払戻制度を使って、残高×1/3×法定相続分での払い戻しもしました。

判例変更と制度の施行日をまたいで手続をしたケースで、Dさんは、E銀行にも改めて払戻制度での払い戻しも求めたのですが、すでに法定相続分での払い戻しを受けていたため断られました。

創設された払戻制度は、各金融機関ごとの手続が必要で、各銀行での限度額も少なく、手間がかかるので、諸手を挙げて良い制度とは言いがたかったです。

その点、「せつない」法改正でありました。

 

2021-06-30|タグ:

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