小堀球美子の相続コラム

相続コラム‘ほっとブレイク’実録!弁護士に依頼したら!?

きょうだいの一人が亡くなった父の預金を使い込んでいたらしい???

KKさんは、父の遺産をなかなか明らかにしてくれない、父と同居していた兄に不審を持ちました。

インターネットでいろいろ調べているうちに、遺産である預金のありかは自分で調べないとならないことが分かりました。

父の自宅、元の勤務先近くの金融機関をそれこそ、信用組合までローラー作戦で徹底的に調べて、A銀行とB信金、ゆうちょ銀行に父の預金があったことが分かりました。

ある法律事務所で、その出し入れの履歴を取ったらいいと言われ、取ってみると、父が亡くなる1年前から、50万円単位の引き出しがあることが分かりました。それも、父が危篤で入院中の亡くなる1ヶ月前からは、毎日のように限度額50万円の引き出しがあり、現在では、A銀行3円、B信金324000円の残高、ゆうちょ銀行は解約されているのが分かりました。

KKさんは、どうしてこんなことが出来たのだろうと疑問に思いましたが、兄は、父が亡くなって以降、KKさんを避けるようになったことに疑惑を強めました。

そして、インターネットで調べて、そうしたときには、返還請求が出来ることを知り、当事務所にお越しになりました。

私は、KKさんの依頼を受けて、父の預金の引き出し状況を一覧表にして、兄に、父がおろしたとはとうてい思われないので、説明を求める内容証明郵便を出しました。

兄からは、内容証明でもうけた期限内には、何の回答もありませんでした。

そこで、KKさんと協議し、地方裁判所へ提訴。

兄が使い込んだ約5000万円の半額の返還を求める、不当利得返還請求訴訟です。

訴状に貼る印紙は9万5000円、初期費用もけっこうかかります。(印紙代は訴訟費用なので、勝てば、通常訴訟費用も被告の負担となります。弁護士費用はそれぞれが負担しないとなりません。)

KKさんは、是非とも、第一回口頭弁論から私と一緒に裁判所に行きたいと言いましたが、第一回で大きく訴訟が動くこともなく、普通地裁では代理人出頭で足りますよ、と説明すると、普通にやった方が好ましいと判断して、第一回には私だけで出頭しました。

被告は、代理人を付けて徹底的に争う答弁です。

第一回で、裁判所は、被告の、預金を引き出したのは確かだけど、父の必要経費に使ったという主張に対して、被告に、さらに使途を説明、立証するように求めました。

第二回口頭弁論も、被告の準備なので、原告側はとりあえず被告の主張を待ちます。

第二回目で、被告の使途の説明がおおむね出来たので、裁判所は、次回までに原告に被告の使途に関する説明への認否反論を行うように求め、次回からは法廷でなく、和解室で争点整理を行う、弁論準備期日を指定しました。

私は、KKさんと打ち合わせをして、被告の主張する1療費2介護費3父のために介護したので、介護報酬相当額4父の生活費5父の葬儀費用という使途について、12は領収証のある限りで認め、3は報酬契約はなかった、4は月額5万円まで認める、5はKKさんは、葬儀に関し兄から何の相談も受けず、兄主導で行われて、しかも、兄から葬儀の最中無視され続けたので、認めない方針を決めました。

この主張を準備書面にまとめて、第一回弁論準備期日に臨みます。

裁判所は、被告に原告が認めないとしている事項について、被告に、さらに反論を行うよう、第二回弁論準備期日をもうけました。

被告は、期日までに、父からもう体も弱ったので、以後は預金の管理を頼むと言われたと、主張する準備書面を出しました。

KKさんは、私に、兄の主張は通るのかと聞いていましたが、私は、親族間なので、紙の証拠があることは少なく、状況証拠の集積で被告は立証してくると思うが、そもそも、父にそのようなことを頼む能力があったか主張しようよ提案し、かねて用意していた父の介護保険の記録を証拠として出して、父にそのような委任をする能力はなかったことの証明を行っていく方針を決めました。

その後、何回か弁論準備期日が行われて、主張が出そろった段階で、裁判所は、親族間の紛争なので、一度和解の可能性を探りたいといい、原告に和解案を出すよう求めました。

和解案の骨子。1医療費2介護費は領収証のある限りで認め、3報酬は認めない4生活費は月額5万円で認め、5葬儀費用は認めない、と言う方針で、和解額2000万円とする提案を行いました。

和解協議に何度か裁判所で和解期日が行われましたが、原被告間では、3被告は少しでもいいから報酬を認めてほしいとこだわり、また4生活費の額と、5葬儀費用でどうしても額が合意できずにいました。

もはや合意の可能性がなく、当事者尋問の手続きに進み、判決か!?となったとき、KKさんは、私の考えを聞きたいと言うので、私はKKさんと協議を重ねました。

私は、3と5で少し、妥協できないか、判決になってもそれは裁判所の一判断に過ぎずどう転ぶか分からないし、自分で結論をコントロールできる和解をすることがベストではないが、ベターなのではないかとアドバイスしました。

結局、少し原被告間でやりとりがあって、

3 月2万円を認め、

5 通夜と告別式に限って認め、

4 は主張通り、

約1800万円で和解をしました。

判決をもらうときの注意点は、

必ずしも自分に有利な判断が出るのではない、控訴の可能性、支払ってくれないときには被告の財産に執行していかなければならないことです。

KKさんの事件はこうして終了しました。

2016-01-24|タグ:

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