小堀球美子の相続コラム

相続コラム~となりの遺産分割、手続き編「遺産分割と遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)」

父母が相次いで亡くなったというケースで、後に亡くなった母にだけ遺言があり、その遺言によれば自分の遺留分が侵害されているというような場合です。
父については、遺言がないわけですので、遺産分割協議が行われなくてはなりません。母については、遺言があり、遺言とおり執行されるだけなので、遺産分割は不要で、ただ、遺留分を侵害されたのであれば、遺留分減殺請求が可能です。
これについて、きょうだいで話し合ったが、対立してまとまらない時には、父については、家裁で遺産分割の調停を行い、調停でもまとまらなければ審判に移行するという手続きが行われます。一方、母については、調停前置であるものの、遺留分減殺請求は地裁で扱われるので、父の遺産に関する紛争と、母の遺産に関する紛争は、手続きが異なり、一回的解決ができないのではないかという問題が生じます。
たとえば、父の遺産としてA不動産とB不動産があり、それぞれの評価が、800万円と1200万円としましょう。母の遺産はC不動産1000万円で、姉に相続させるとなっていたら、妹Dはどのように姉との紛争を解決していったらよいでしょうか。
父の遺産分割は家裁に申し立て、母の遺留分も調停前置は家裁なので、家裁に申し立てられたというケース。
遺留分は計算なので、ほかに生前贈与があるか否か争われている、ほかに評価の分かれる未公開株式があり、その評価で争われているなどの難しい問題がなければ、父の遺産分割の計算と一緒に計算されることが合理的ですので、遺産分割調停と遺留分調停とが一回の期日で同じ土俵で行われることはままあります。先ほどの例で、他に争点がなければ、姉は妹に遺留分250万円を払えばいいので、遺産分割の代償金と合わせて解決できます。
問題は、生前贈与や未公開株式の評価は争訟事項なので、本来的に地裁で扱われるので、家裁では審判等で判断されないということです。
この場合は、父と母の紛争は分けてしまって、別々に手続きを行うことがまず、考えられます。
ただ、姉はB不動産を、妹はA不動産を取得することを希望し、その点協議はできたのだけれど、そうすると、姉は妹に200万円の代償金を払うことになります。そして、遺留分減殺請求訴訟でも、姉が一定の遺留分を払うというのであれば、代償金、遺留分の価額弁償金の支払いは、一回的に解決できた方が得策という側面もあります。
その場合は、遺留分の訴訟を先行させて、ある程度の目処が付いたときに、地裁の合意を家裁での計算に反映するという取り決めができればいいと思います。
いずれにしても、手続き的に難しい問題がありますので、弁護士に依頼するのは必須と思われます。

2020-06-10|タグ:

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