小堀球美子の相続コラム
遺言がなくて怖かった話し?
日本人は、まだまだ遺言を書くことに抵抗があるようです。しかし、遺言がなくて、残された相続人が怖い思いをすること、もとより、故人の思いが遺産分割に反映されないで、あの世で後悔することもあります。何回かに分けてケーススタディをお話しします。
お父さんが、長男と二世帯住宅を建て、ともに連帯債務者として住宅ローンを組み、自宅土地建物は共有にしていたとき。他の法定相続人は、お母さんと他家へ嫁いだ長女であったとき、どういう問題が生ずるでしょう。
お父さんの意思としては、長男に自宅を全て与え、住宅ローンも長男に負ってもらって、お母さんの老後の面倒も見てもらいたいところです。
お父さんがその意思を実現したかったら、遺言を遺しておくべきです。もし、遺言を遺していなかったら、長女もその自宅のお父さんの持分に権利を持って、住宅ローンも法定相続分で負うことになってしまいます。
長女も権利を主張する時には、長男は自宅を得る代償金を長女に払わなくてはなりません。代償金を払えなければ、自宅のお父さんの持分は長男、お母さん、長女の共有という結果になってしまいます。
逆に、長男が住宅ローンは長女も負うのだと言い出したら、長女も自宅に住んでもいなくても銀行に債務を負わなくてはなりません。
これを回避するために、自宅の持分は長男に相続させ、その代わりに長男に住宅ローンという負担を課す、このような遺言が有効なのです。
ただ、遺言があっても長女には遺留分がありますから、それを行使されることは覚悟しておかなければなりません。お父さんは、遺留分に相当する預金等も長男に残しておくと有用です。
2010-09-09|タグ: