小堀球美子の相続コラム
共有不動産(遺産分割前)の賃料所得を確定申告したとき
遺産分割前に、共有の不動産から賃料収入があって、それを全額自己の収入として所得税の確定申告をした人が、払いすぎた所得税額を事務管理に基づく有益費用として、ほかの相続人に請求できるか。
ここで、事務管理とは、契約関係がないのに、親切で他人の事務をしてあげることをいい、その人の利益に添う事務を遂行したとき、それにかかった費用はその人に請求できる制度をいいます。
たとえば、海外旅行中のある家が、台風で屋根が飛ばされたとき、隣人が、親切で、屋根の応急措置をしてあげたとき、隣人は、その人の利益に添うように修理してあげないとならず、そうであるなら、かかった費用を請求できる、といった具合です。
最高裁は、他人の事務と認めず、ほかの相続人に、請求できないとしました。
そうすると、払った人は払い損?
実務では、払ったひとは、他の相続人に過大に払った分を返せということはできませんが、ただ、払った人は修正申告し、ほかの相続人はもらった賃料を新たに申告しないといけませんから、いっぺんに協議で解決してしまおうとします。
つまり、子Aが賃料全額15万円を得た。相続開始後の賃料は、法定相続分に応じて、各相続人が承継しますから、子B子Cも5万円ずつもらえることになります。このとき、Aが所得税として払った分、(たとえば)6000円を経費としてBCに請求することはできません。しかし、Aは修正申告し、還付を受け、BCは新たな収入として確定申告しますから、その手間をはぶき、ABC間で調整してしまおうとするのです。
Aは直接請求はできないが、あとで修正申告して取り戻せるということです。
このように、遺産分割協議では、様々な事柄について、柔軟に話し合われます。
2010-12-22|タグ: