小堀球美子の相続コラム
相続開始後の寄与の主張について
遺産分割事件で、故人が死亡してから銀行の口座を凍結する手続きを行ったとか、遺産である不動産の事実上の管理を行ったとか、果ては、遺産分割でもめたので、弁護士の有料の相談を受けたとか主張して、その実費報酬相当額を遺産から先にもらいたいと主張する人がいます。
分割するまでの遺産の管理は、相続人が共同で行うのが建前ですので、確かに、相続人の一人に労力や経済的負担が出たら、これをみんなで公平に分配するのが、原則です。遺産管理にかかった費用(実費)は、相続財産から支弁するのが相当でしょう。
だけど、上記の例では、どうも、死後の寄与分のようなものを期待しているようです。ほかにも、私が相談された事例で、やはり、死後遺産のために相当働いたのだから、その分多くもらえるはずだと言っている方が何人かいました。
しかし、この主張は認められません。相続人は、相続財産を管理するのに、自分の財産と同じ注意義務しか課されなく、委任契約の受任者のような善良な管理者の注意義務を課されていません。委任契約も原則は無報酬ですので、それより低い注意義務しか課されない相続人には、報酬請求権にあたるものは認められないのです。遺産管理は「お仕事」ではないことからもうなずけるでしょう。
かような問題が生ずるのは、遺産分割に相当程度時間がかかってしまうからという側面もあります。場合によっては、専門に財産管理をする人を選任すること(それに報酬を支払うこと)も検討してよいのかもしれません。
2009-11-24|タグ: