小堀球美子のひとりごと

「壬生義士伝」について

小説家の浅田次郎氏は、文豪とは言えないかもしれないけれど、人間の心の機微に入り込む表現や描写をしていて、とても引き込まれます。
私は、特に「壬生義士伝」が好きで、毎日ベッドに入るとこの本のなんページかを読み、その後眠りにつくことを日課にしているほどです。
「盛岡はやさしげな町であった。凛烈の気をうちに秘めつつ、ほのぼのとやさしげであったあの吉村貫一郎の、そこはたしかに生まれ育った町であった。そのやさしさが、わしを責めた。」なんていう下りは、何度読んでも私の涙腺を刺激します。
そして、守銭奴、出稼ぎ浪人とさげすまれながらも、せっせと国元の家族に人を斬ることで稼いだお金を送る主人公が、なぜ、最後に義のために死んだのか、義のための戦いをしたのちに国への帰参を願い出たのか、そして、残された人々が、彼のことを「義士」と位置づけたのか、何度読んでも主人公という人物が分らなくなり、分りたいから何度も読むという行動に駆り立てられます。
かように複雑な人間の内面を忖度できるようになりたいと思うものです。

2009-11-12|タグ:

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