小堀球美子の相続コラム
相続に関する訴訟と仮差押え
たとえば、遺留分減殺請求訴訟を予定しているとき、裁判には時間がかかります。遺言で取得した不動産等について、遺言で相続させるとされた相続人がほかへの処分を検討している場合など、その相続人はほかに資産がなく、訴訟で勝っても実際遺留分が支払われないのではないかと心配されるときどうしましょうか。同じく、預金の引き出し行為について、他の相続人に返還を求めるときなど、裁判で勝っても実効性がなければ目的は達し得ません。
このようなときには、被告の財産を仮差押えすることを検討します。たとえば、不動産について、仮に差し押さえるとの決定をもらうと、被告は、これをほかへ譲渡したり、抵当権を設定したりできなくなります。
仮差押さえには相当の担保を積むことが条件とされます。不動産などでは、その価格の2割くらいが相場です。これはけっこうな額になります。担保は、被告が仮差押えにより損害を被ったときの損害を補償する意味があります。
担保の取り戻しは、訴訟で勝つか、和解で被告が担保取り消しに同意するか、訴訟で負けても一定の期間内に被告に担保権の行使をするべきことを催告し、その期間内に被告からその行使がないときになしえます。被告は、原告の訴訟が不当であるとして損害賠償請求ができ、担保が引き当てになりますから注意を要します。
目的実現を確実にするためには、仮差押えも検討すべきですが、担保が必要なので、その用意が可能かどうか現実的な対応が求められます。
2010-06-14|タグ: